【ACOUSTICS】 音楽家、音響家、音楽ファン、そして音にこだわる皆様のために楽しく学ぶ音楽音響学を展開します。 ONSOKU web と連携しています。取り上げてほしいテーマ、ご質問などは お問い合わせ からどうぞ。なお、当オフィスの WORKSHOP とも連携しています。

目次

音の三要素、音楽の三要素

 

音の高さは周波数で表すことができます

 

基準周波数A=440Hz って何?

 

音楽のドレミ...は、どうやって作られたのでしょうか

 

音律(ドレミ...の作り方)には、実はいろいろな種類があります

 

みんなが普通に使っている音律「平均律」って、どういうものでしょうか

 

絶対音感は必要でしょうか

 

音楽音響エッセイ ① 耳を鍛える

 

番外編 ① 防音室の役割とは

 

 

ONSOKU web(連携外部サイト)では、様々な音響測定についての知識、技術の支援を行なっております。

        →楽器の基本周波数の測定

        →楽器のエンベロープ、ダイナミックレンジの測定

        →楽器辞典の作成

        →騒音の測定

        →伝送特性の測定

        →ラウドネスレベルの測定

 

音楽音響学とは?

 

みなさんは「音響学」というと、どんな学問を想像しますか? 音の響きの学問...ちょっと難しい感じがしますね。

音響学は英語で acoustics (アコースティックス)といいます。アコースティック・ギター(生ギター)のアコースティックに s が付いたものですが、そもそもアコースティックは直訳すれば「音響」という意味なのです。

 

音響学は音波(媒質の振動)を扱う物理学の一分野ですが、音は生活上なくてならないはものであり、またヒトの感性に訴えるものでもありますので、単なる物理的な現象では片づけられません。音は音楽となり、芸術・文化とも密接な関わりあいがあります。

そこで、音響学には音響心理、音響生理、聴覚、音声、建築音響、騒音・振動、電気音響、音楽音響、超音波...といった、いろいろな分野があり、それぞれが音楽、芸術、工学、医学、心理学、哲学などと密接に連携しながら、成り立っているのです。

 

ここで取り上げるのは、そんな広範囲に及ぶ音響学の学問範囲の中の一つである音楽音響学についてです。

音楽音響学は、「音楽の科学」です。普段、何気なく接している、あるいは感性によって感じている音楽を、より客観的に捉えようという学問です。たとえば......

音楽で使われている音階「ドレミ...」は、どのように作られたのか...、美しいハーモニーと濁ったハーモニーの違いは?、なぜ美しい音色を出せる楽器とそうではない楽器があるのか...、そんなことを科学的に解明する学問なのです。

 

musical acoustics 音楽音響学    

 

古代ギリシャ文明におけるピタゴラス音律に端を発する音と音楽を科学的に研究する学問です。

 

ピタゴラス Pythagoras  (582BC-496BC) 

 

ピタゴラス(ピュタゴラス)は、古代ギリシャの哲学者、宗教家、数学者です。古代ギリシャ時代といえば古代オリンピックの発祥、世界遺産にもなっているパルテノン神殿、ギリシャ神話などが思い出されることと思いますが、もうひとつ、忘れてはならないものがギリシャ哲学です。ソクラテス、プラトン、アリストテレスと続く師弟の哲学者たちや、このピタゴラスの名を一度は耳にしたことがあると思います。

 

ピタゴラスは、その哲学において「数は宇宙の本質である」と考えました。そこでピタゴラスは数学を研究し、かの有名な「ピタゴラスの定理」を発見したとされています。ピタゴラスの定理は中学3年で勉強しますが、覚えていますでしょうか。それは「直角三角形の直角を挟む2辺の2乗の和は、斜辺の2乗に等しい」というものです。つまり斜辺の長さをc、その他の2つの辺の長さをa、bとすると、 a2+b2=c2 という関係が成立するという定理です。

 

このように数学の研究に打ち込んだピタゴラスは、数学と音楽の関係についても研究し、そこから「ピタゴラス音律」を作り上げました。ピタゴラスは、「長さが整数比となる時に調和するのが、波動現象の特徴である」という哲学に従って、完全5度音程(たとえばドとソ)の周波数比を 2:3 として、そこから音律を作りあげました。

 

この時代の哲学は、このように、今でいう哲学より範囲が広く、自然科学、数学などが含まれるものでした。たとえば「次元とは何か」あるいは「宇宙論」といったテーマは、今でも哲学と物理学の両面から論じることができるように、哲学と自然科学は本来、密接な関係にある学問である、と言うことができるでしょう。

 

ギリシャ哲学者として有名なピタゴラスに数学でお世話になったり、今回また音律でお世話になったりする理由は、そこにあるのです。なお、これらの理論は、ピタゴラスという人物が一人で作り上げたものではなく、ピタゴラス学派、ピタゴラス教団といったグループによって生み出されたものとされています。